特集

豊永 盛人 ヒト×モノ×コト

この「ヒト」がいて、ある「モノ」に出会い、新しい「コト」が動き出す。「新しく魅力的な沖縄」を感じさせてくれるフラッグシップな商品は、いつでも「ヒト×モノ×コト」の交錯点で生まれている。

ヒト 琉球張り子作家、豊永盛人

 作家名があまり前面に出ることのない郷土玩具の世界で、「琉球張り子作家」として認知され、県内外で人気を博している豊永盛人さん。張り子に限らず、彼が生み出すさまざまな作品には見る人の心を和ませるユーモアがあり、何もかもを許してくれそうな南の島の癒しを感じさせてくれる。それは、「赤べこ」や「さるぼぼ」といった日本各地の郷土玩具にも共通するもので、作家としてのこだわりや、その時々の流行を越えたところにある普遍的な「温もり」や「愛おしさ」が人々を魅了するのだろう。

 沖縄県立芸術大学在学中には、彫刻を学んでいたという豊永さん。その後アメリカ遊学中にアフリカの彫刻など民間芸術に触れる機会があり、「その土地の生活の中で、必然性を持って生まれてくるものに強くひかれた」という。琉球張り子を作り始めた直接的なきっかけは、友人であるシーサー作家の宮城光男さんから「沖縄の郷土玩具を作ってみないか?」と誘われたこと。以前から日本各地の郷土玩具が好きで時々買い求めていたが、その中には琉球張り子もいくつかあった。調べてみると、ほとんどが戦火で失われたため、沖縄に現存する琉球張り子は非常に少なく、戦後に復元にされた制作技術も、後継者不足で風前の灯であることを知る。
「いざ作ろうとしたら、わからないことだらけで(笑)。各地の郷土資料館を訪ねて、沖縄から本土に渡って戦火を逃れた作品を見せていただいたり、本土の張り子人形の技法を参考にして作ってみたり、それからは研究と試行錯誤の日々になりました」


モノ 琉球張り子に込められたもの

 琉球張り子をはじめとする琉球玩具は、もともと首里士族の子ども達のために作られていたものが、明治以降、一般庶民にまで広まったといわれている。毎年旧暦の5月4日(ユッカヌヒー)に催された玩具市には、ウッチリクブサー(起き上がり小法師)やウシアーシ(闘牛)など、沖縄の身近な動物や風物を題材にした色取りどりの張り子が並べられ、子ども達は目を輝かせていたという。張り子専門の職人がいたわけではなく、漆職人や焼き物職人が仕事の合間の手慰みに作って売っていたそうだ。親は、健やかな成長と立身出世を願って子どもたちに玩具を買い与え、親の想いが込められたおもちゃを、子ども達もまた大切に扱っていたという。
  大正以降、セルロイド製やブリキ製など大量生産できるおもちゃの出現によって、手作りの琉球玩具は衰退していく。さらに先の大戦を経て作品の多くは失われたが、戦後、琉球玩具制作の第一人者といわれる古倉保文氏(那覇市指定無形文化財)らが、幼いころの記憶を頼りに琉球張り子を復元した。今、お孫さんである中村真理子さんが、古倉氏の遺志を継いで「こくら張り子」のすべてを担っている。


コト 玩具が持つ普遍的なわくわく感

 琉球張り子を作り始めてまもなく10年になる豊永さん。手探りの状態から、試行錯誤して生み出したオリジナルの技法や作風は、今も進化し続けている。
「大がかりな“芸術”よりも、生活に密着した“芸術”にひかれます。琉球張り子は小さいけれど、大きな何かが込められた“理想の形”を目指すこともできる。古典と呼ばれているものを調べたり、そこからインスピレーションを得たり、まったく新しい発想でオリジナルを作ったり。伝統だけでも創作だけでもない張り子づくりのリズムが、自分の性に合ったんでしょうね」

 豊永さんが主催している「ユッカヌヒーアート展」は、かつて琉球張り子が売られていた旧暦の5月4日にちなんで、2004年から毎年開催しているグループアート展。琉球張り子職人の中村真理子さんや、友人でもある県内の若手人気アーティストが集い、「子ども」や「遊び」をテーマにした作品を展示している。
「昔は子どものおもちゃであった琉球張り子も、今では大人のための工芸品です。琉球張り子という形が時代の移り変わりと共に失われていくのは、仕方のないことだとも思っています。だから、形にこだわるよりも、子どもがおもちゃを手にした時の“わくわく感"を大切にしたい。それは普遍的なものだから。これからも“玩具"をテーマに、自分が好きなもの、楽しいものを自由に作っていくと思います」

文=原田ゆふ子
写真=武安弘毅
ディレクション=momoto編集部

ウッチリクブサー(起き上がり小法師)、ジュリ馬といった古典的モチーフの琉球張り子ウッチリクブサー(起き上がり小法師)、ジュリ馬といった古典的モチーフの琉球張り子

豊永さんが「理想の形」と呼ぶ人間国宝、宮内フサさん作の張り子。「嫌みがなくて少しも偉ぶらない、こういう存在に憧れます」

工房の棚には、子どものころに作った作品や買い求めた郷土玩具など、楽しいおもちゃがずらり工房の棚には、子どものころに作った作品や買い求めた郷土玩具など、楽しいおもちゃがずらり

タクシーなど現代的なモチーフから生まれた創作張り子。百年後にはこれが古典になるタクシーなど現代的なモチーフから生まれた創作張り子。百年後にはこれが古典になる

豊永さんのユーモア溢れるイラストとゆるい文章が幅広い世代に人気の「沖縄おもしろカルタ」豊永さんのユーモア溢れるイラストとゆるい文章が幅広い世代に人気の「沖縄おもしろカルタ」

豊永さんの世界観が感じられるお店「玩具Road Works」豊永さんの世界観が感じられるお店「玩具Road Works」

表情ひとつですべてが変わる。一筆入魂の顔入れ表情ひとつですべてが変わる。一筆入魂の顔入れ

豊永 盛人(とよなが・もりと)

1976年嘉手納町生まれ。沖縄県立芸術大学彫刻科在学中、'98年よりアメリカに遊学し、同年SMFA drawing showに入選。2001年より独学で琉球張り子を作り始め、玩具をテーマに県内外で個展やグループ展を積極的に開催している。'05〜'09年日本民藝館展に連続入選。

取材協力
玩具Road Works
住所:那覇市首里当蔵町2-19
電話:098-887-4069
URL:http://toy-roadworks.com/
e-mail:info@toy-roadworks.com

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