カルチャー

琉球漆に吹き込まれた、新しい息吹「OKINAWA TOUCH」

沖縄は、漆の島。国王の居城だった首里城は、弁柄色の漆で彩られている。琉球漆器は、沖縄の伝統的な工芸品として暮らしを彩り、お箸などの小物はお土産物としての人気も高い。そんな琉球漆と、フランス人ジュエリーデザイナーとの出合いから、新しい可能性が生まれた。コレクションの名前は「OKINAWA TOUCH」(オキナワ・タッチ)。

琉球漆のパーツを使ったアクセサリーのコレクション

「琉球漆との出合いは、5年前。それまでも漆を知ってはいましたが、漆のパーツを使って本物のジュエリーを作るのがこんなに楽しいとは」
 と語るのは、パリ在住のアクセサリーデザイナー、クリスティーヌ・ラバーンさん。彼女のブランド「バビローヌ」は、欧米はもちろん、日本国内でも大人気。シンプルな装いを引き立てる存在感は、不思議なことにコンサバ系セレクトショップでも、モードの先端を行くアバンギャルド系セレクトショップでも評価が高い。

 バビローヌの中でも、ひと際個性的なコレクションが「OKINAWA TOUCH」だ。琉球漆のパーツを宝石のように扱った、オリジナリティ溢れるアクセサリーが次々と発表されている。漆にパリのスタイルが取り入れられることで、工芸品というイメージの強かった琉球漆の存在意義が多様化し、新しい表現の世界が広がった。

「漆のパーツは、天然石との相性がいいですね。同じパーツを使っても、天然石との組み合わせによって、年齢層が幅広くなりました。パリでも、3店舗でOKINAWA TOUCHを扱っているんですよ」

 クリスティーヌさんに琉球漆を紹介したのは、(株)プラザハウス代表取締役社長の平良由乃さんだ。クリスティーヌさんは、
「ヨシノはアグレッシブなバイヤーで、優れた感覚の持ち主。彼女自身も琉球漆が大好きで、漆を別の方法で表現したいと考えていたんです。OKINAWA TOUCHは、彼女のアイデアとコーディネートから生まれたコレクションです」
 と、平良社長を評価する。

漆文化を深く知ることで表現方法はモダンな方向へ

 2010年秋、新作コレクションとともにクリスティーヌさんが来沖した。バビローヌのアクセサリーを愛用する顧客と接するのは、非常に興味深いとクリスティーヌさんは語る。

「バイヤーは意外と保守的で、作品や素材にそこまで深い興味は示しません。でも顧客は違う。作品や素材、あらゆるものへの興味が深く、さまざまな質問を受けます。多くのお客様は、強い雰囲気を持ったもののほうが好きみたい。ノーマルなものより、変わったものが好まれ、受け入れられるとは思いませんでした。5年前にOKINAWA TOUCHを始めたころは、小さめのパーツを使っていましたが、5年を経て、パーツ自体がだんだん大きくなっています。最近では漆が最も重要なピースになっていて、パーツの形も変わってきました。美しいカーブを描き、ジオメトリックなシェイプのパーツは、とても自然で純粋なイメージです」

 OKINAWA TOUCHは、4人の漆職人が作り上げるパーツを見て、クリスティーヌさんがデザインを起こし、製作される。クリスティーヌさんが初めて沖縄を訪れた際、平良社長は彼女を漆塗りの工房へと案内した。その時の感動をクリスティーヌさんはこう語った。

「漆の文化は知っていましたが、ヨシノに工房へ連れて行ってもらい、工程など漆を深く知ることで、さらに影響を受けました。漆の原形を見ると、まさかこれが宝石のようになるとは思いもよりません。完成したパーツは、触るのもはばかられるような、強いアートピースなのに、ソフトな肌触りを感じる。これは尊敬に値するものです」

琉球の手仕事とパリのエスプリとの見事なコラボレーション

 OKINAWA TOUCHの漆パーツを製作する職人さんは、現在4人。その一人である仲西常次さんは、下地からすべて天然漆を使用している。一つのパーツが完成するまでには9〜10工程あり、早くても3週間〜1カ月を要するという。パーツのデザインは、クリスティーヌさんから「こういうデザインで」とリクエストが来ることもあるが、沖縄側からも「こんなカタチはどうですか?」と提案することもあるとか。

「僕らがパーツを塗らせていただくことで、沖縄の工芸が世界へ出て行くことは、大変ありがたく、うれしいことです。デザイン力も販路もなくては、製品を流通させることはできない。僕らも勉強になります」
 と、仲西さんはいう。その美しさを知っていても、なかなか普段使いにはしづらい漆器。現代人のライフスタイルからは少し違うところにあるように見え、漆器離れが進んでいることは否めない。

「僕自身も、パーツで甘んじているだけではいけないのかもしれませんね。漆の一つのスタイル、進むべき方向の一つを、平良社長とクリスティーヌさんに見せてもらっているのかもしれない」

 沖縄の高温多湿な気候は、塗った漆を硬化させるのに最適といわれる。発色が今ひとつな時は、強い紫外線に当て、色を出すこともある。琉球王朝の時代から受け継がれた手仕事が、新しい時代の装いで世界へと漕ぎ出す。文字にすると高揚感のある表現になるが、受け手側、つまりOKINAWA TOUCHを購入する世界の顧客にとって、OKINAWA TOUCHを手にするのは自然なことだ。目の前に、ほしいと思える「いいもの」があるから。彼女達の多くは、オキナワをよく知るオキナワファンではないだろう。それでも固定ファンがつくのは、OKINAWA TOUCHそのもののクオリティが本物だから。小さなシマから世界を相手にする時のヒントが、OKINAWA TOUCHにはたくさん秘められている。

文=いのうえちず
写真=島袋常貴
ディレクション=momoto編集部

クリスティーヌ・ラバーンさん。「私によってジュエリーは自分自身の一部。デザインのインスピレーションは、心にあるものです。漆塗りの工程はとても興味深い。工房を訪れた時は感動しました」と語るクリスティーヌ・ラバーンさん。「私にとってジュエリーは自分自身の一部。デザインのインスピレーションは、心にあるものです。漆塗りの工程はとても興味深い。工房を訪れた時は感動しました」と語る

OKINAWA TOUCH2011年春夏コレクションより。根来塗(ねごろぬり)という手法を用い、一つひとつが異なる表情を持つオリジナルパーツになっているOKINAWA TOUCH2011年春夏コレクションより。根来塗(ねごろぬり)という手法を用い、一つひとつが異なる表情を持つオリジナルパーツになっている

OKINAWA TOUCH2011年春夏コレクションより。刀を思わせるシャープなフォルムのパーツは「カタナ」と呼ばれているOKINAWA TOUCH2011年春夏コレクションより。刀を思わせるシャープなフォルムのパーツは「カタナ」と呼ばれている

右上のダークブラウンが生漆の色。生漆に顔料を加え、さまざまな色を生み出す右上のダークブラウンが生漆の色。生漆に顔料を加え、さまざまな色を生み出す

一番左が木地職人が作るパーツ。漆職人がサンドペーパーをあてて面を取り、平滑な状態にする。左から二番目は、木地固めを施した状態。下地として生漆を擦り込み、湿度70%の状態で硬化させる。さらにペーパーをあてて空とぎをした上に、中塗り漆(生漆を精製したもの)を塗り、硬化させて空とぎ。右から2番目は、呂漆を塗って硬化させ、水とぎをしたもの。さらに顔料を加えた漆を塗り、といで下の層の呂色(黒)を露出させたのが、一番右のパーツ。この状態でフランスへと送るため、漆職人は最終的にどんなデザインのジュエリーになるか、製品を見るまではわからないのだとか一番左が木地職人が作るパーツ。漆職人がサンドペーパーを当てて面を取り、平滑な状態にする。左から2番目は、木地固めを施した状態。下地として生漆を擦り込み、湿度70%の状態で硬化させる。さらにペーパーを当てて空とぎをした上に、中塗り漆(生漆を精製したもの)を塗り、硬化させて空とぎ。右から2番目は、呂漆を塗って硬化させ、水とぎをしたもの。さらに顔料を加えた漆を塗り、といで下の層の呂色(黒)を露出させたのが、一番右のパーツ。この状態でフランスへと送るため、漆職人は最終的にどんなデザインのジュエリーになるか、製品を見るまではわからないのだとか

木箱の中で湿度を約70%に保ち、漆を硬化させる木箱の中で湿度を約70%に保ち、漆を硬化させる

完成したOKINAWA TOUCHのパーツ完成したOKINAWA TOUCHのパーツ

BABYLONE2011年春夏コレクションより。OKINAWA TOUCH以外のラインは天然石を使った個性的なデザインが多いBABYLONE2011年春夏コレクションより。OKINAWA TOUCH以外のラインは天然石を使った個性的なデザインが多い

琉球漆職人の仲西常次さん。8〜10もの工程を経ても、厚さ1ミリにも満たない世界で、頼りになるのは自らの目と勘、手の感覚のみ琉球漆職人の仲西常次さん。8〜10もの工程を経ても、厚さ1ミリにも満たない世界で、頼りになるのは自らの目と勘、手の感覚のみ

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